牧野駅前「石狩」への道【1】2011年11月27日 19時00分

 こちらからリンクさせていただいる「加藤思何理の不確定性日記」。彼の好む街角や路地の数々は、僕の琴線に響き渡るもので、そこへ行ってみたくなる場所ばかりと言っても過言ではありません。実際、金沢へは行ってしまった訳です。
 いずれは彼の眼にとまったものを後追いして撮影し、何らかの形でまとめてみたいとも考えています。悪く言えばひとのふんどしで相撲などともいわれましょうが、そこへ行きたい、撮りたい衝動が理性をうわまります。これはインスパイアでオマージュだと(ふざけているようですが、決してそうではなく)割りきって、衝動の赴くままに撮影に出かけることにしました。

 今回、訪ねてみたのは、牧野の路地への旅。(2)に掲載されている写真に写っている「お食事処・石狩」です。細い道の坂の途中にある食堂、なんとも痺れるロケーションです。

 11月も終りが近い日曜日、写真展を直前に控えての得意技、敵前大逃亡を決め込んで、京阪電車で出かけました。


 久方ぶりに京阪牧野駅に降り立つ。20年くらい前は駅近くの「牧野駅前デパート」へよく行ったものです。買い物にではなく、そこには当時PC-Van写真SIGの論客「くまさん」がスタジオを構えておられたのでした。論争や対立をしながらもくまさんにはよく世話になったものです。今は画像処理で文化財復元のお仕事をしておられるとネット上で知りました。


 しかし今回は目的地へまっすぐに行こう。それにしても牧野駅はその雰囲気がまるで変わらないように思えます。以前からずっとこうだった感じです。


 もはやレトロと言ってよいしょう。なんとも味わいのあるコインロッカーの佇まいです。


 京阪電車の中間駅というかローカル駅は皆こういう感じ。トラス構造の架線柱が駅舎の外縁に立っています。御殿山も橋本も八幡もこんな感じではなかったか?


 工事現場フェンスに飾られた造花。この手の全樹脂製の造花ももはや珍しいですが、それをこうやって工事現場に飾るというのもまた珍しくなりました。実にレトロで良いね。


 ほう、福祉施設の製品とな。授産施設か何かでしょうか?このあたりだとどこになるのだろうか?と昔の仕事的興味が湧きます。


 すぐに穂谷川の左岸に出ます。この路をずっと遡れば学研都市線の藤阪駅付近に至る。一度だけ走ったことがあるが、なかなか快適な路であった。むろん、自転車で走ったのですが。
 あの橋を渡って行きましょう。

<つづく>

牧野駅前「石狩」への道【2】2011年11月28日 00時00分

 橋をわたると見えたのは…おお、有名な「牧野酒道場」ではないか?もう閉店してしまったようだけれど、それを惜しむ声がネットの上にあります。加藤思何理氏もやはりそのブログで牧野酒道場に触れておられます。なるほど、こんなに駅の側だったのか。


 こちらは店本体ではないのだろうか?


 左にめをやると…なるほど、ここが店本体ですか。なんだか「只今準備中」程度にもみえるのですが。「準備中みたいだろ?でも閉店してるんだぜ、それ」というところでしょうかねぇ。


 「ありがとう」の文字が実に痛々しいです。


 なかはそのまんまにも見えます。


 目指す「石狩」はこのY字路の右の奥にあるはずです。カメラにフィルムを詰めて撮影に備えましょう…というか、このY字路も十分に味わい深い被写体になるなぁ。今度は夜に、店が開いているときに写したいものですな。

<つづく>

牧野駅前「石狩」への道【3】【完】2011年11月29日 00時00分


 実に味わい深いY字路。ここは昼間ではなくて夕ぐれに撮影に来たいものですね。ついでに店にも入ってみたい。

 さて、目指す「石狩」はもうすぐのはずです。しかし、このあたりの露路はなかなか味わいが深い。フィルムを詰めたカメラでがんがん撮影していると、家の中から女性が…ありていに言えばオバさんが出てきて咎めます。「何、写真撮ってるの?」。
 『ああ、鬱陶しいなぁ』と思いつつもそこはちゃんとした対応をしなければと、にこやかに事情を話し、この地との縁を語り、この雰囲気や風景を褒め、オバさんの話に耳を傾けます。人は警戒心が解けると、いきなり信頼に移り、あれこれと話しをしてくれます。30分あまりも話し込んだでしょうか

 警戒するのはこのご時世ですから仕方がありません。自分だってやはり家の前で写真(と言ってもコンデジで撮ってる連中)には警戒しますからね。でも、オバさん、おたくの家はGoogleのStreetVewで24時間365日世界中に晒されていてるんですよ。
 目の前で起こることに警戒するのは当然のことでしょうけれど、すでにもう撮られて世界中に晒されているということを知らずして、眼の前で撮っている人を咎める。仕方が無いのでしょうけれど、なんだか哀れに思えました。


 まぁそんな感じで不快感を覚えながらも撮影を続けて路を行きますが、なんだかもうそこは近いなという匂いがします。


 おお、見えました、「石狩」。


 「石狩」は既に店を閉じている雰囲気です。加藤思何理氏がブログに書かれたのは2007年の初頭ですから、まもなく丸5年になろうとしています、閉店していても不思議ではないでしょう、このご時世ですから。坂の途中にある味わい深い佇まい、店に灯が入った宵の雰囲気が味わえれば、一層情趣ある景色となっていたでしょう。
 それにしても、加藤思何理氏、はずしません。次はどこへ行きましょうかねぇ。

<おわり>