2010年お正月飾り(1)/餅花2009年12月22日 11時42分

 子供の頃、民話の挿絵の中や地方の風土を写した画の中によくこれが描かれていました。プラスティック製のものが、どこかの商店街のすずらん灯に飾られたりもしていました。それはたいてい柳の枝に紅白の珠がくっついたもので、あれは一体何だろうと子供ながらに思っていました。

 あの不思議な飾り物が「餅花」だと知ったのはだいぶん後の話しで、私はそれを民博(吹田の国立民族学博物館)の展示でで知ったのでした。なんとまぁ呆れた話しです。それまではさして興味も持続していなかったのでしょう、長い間忘れていたのでした。

 それからは興味も持続し、ところどころでこの「餅花」をみつけては喜んでいます。
 よく訪ねる木曽にもっとあっても良いはずなんですが、民家へあまり行くこともないせいか、印象に残るほど見かけません。

 無論、大阪の北河内では飾る習慣もないのか、それとも私が知らないだけなのか、見かけたこともありません。ただ一度だけ、高槻市の芝生(しぼ)地区の旧家でそれは見事な餅花を見たことがあります。そのときに、このあたりの風習なのか尋ねてみれば良かったと後悔しています。

 さて、この餅花、なかなか雰囲気のあるものなので、うちにも飾りたいなぁと思い、ネットで通販がないか検索してみますと、あたりまえのようにありました。それは去年の話しだったのですが、すでに完売。来年こそはと思って、この季節を待っていました。


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 これがそうです。ささやかなものですが、なかなかきれい。これは飛騨高山で作られたもので、彼の地では「花餅」と呼ぶと同梱されていた説明書に書かれていました。NHKでも最近、飛騨高山の花餅の事を取材していました。取材に応えていたお婆さんが「乾いて落ちてきたものを煎って食べるのが楽しみ」と仰っていました。

 餅花は、恐らくは飛騨や木曽のなどの紅殻塗りの薄暗い民家の部屋の隅に、そこだけ花が咲いたようにぼうっと浮かび上がってくる、そんな情景がきっと一番なのでしょう。谷崎潤一郎の陰翳礼賛ではありませんが、古い日本家屋の薄暗さが、このような飾り物を美しく見せるに違いありません。

 さて、我が家に到着した餅花。少し乾燥してきました。このままお正月までしっかりと保ってくれるでしょうか?少し心配になってきています。